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かつての冒険者にキルシェという男がいた。

冒険期に突入した初めの頃、エヴォルに蹂躙されていた内陸を治めるべく、国は冒険省を設立した。
各地から冒険者を募り、未開の土地の調査と開拓を進め、冒険省は国に大きな貢献をする。
冒険省の影響力を懸念した国家は、冒険省の規模を縮小しようと画策。
住民、冒険者らを含む冒険省派と真っ向から対立した。
結果、冒険省が国家を討ち果たし、新たな国家権力としてミルテ統制院が設立された。

16年前に起きたミルテの大火災。
昼間に頻発したボヤ騒ぎはあっという間にミルテ全体を火の海に沈めた。
統制院と冒険者と住民が手を取り合いながらも、多くの犠牲者を出した。
火をつけて回った犯人は捕まったが、火事は三日三晩続いたという歴史的な大事件。

フリーデン王国初代国王カールは、同じ思想の仲間を集めるために広い海を旅し続けた。
五人から始まった航海は、カールの自由を愛する心に打たれた各地の人々を魅了して総勢二十四名の大所帯となる。
彼らの船旅は自由で平和な国を創るための新天地を終着点とし、ゴールへ進む。

フリーデンは初代国王カールから、現王バルドの時代まで六百九十一年の歴史を持つ。
怪鳥が支配した荒れ放題の土地を開拓し、整え、豊かな国にするまでの王たちの長い戦いがあった。
現在では初代フリーデンが怪鳥と呼んだそれを手懐け、崇拝の対象、守り神として崇めている。

ターリの港町、ストレット・アルトには自身の首を絞める王女の像が残されている。
かつてこの土地が一つの国であった頃の歴史の遺物である。
像にはこう記されている。
『国の繁栄のために国を滅ぼした愛すべき王』
皮肉めいた言葉が刻まれた像の周りでは、今日も人々が手を合わせる。